睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠中に呼吸が止まる、あるいは低呼吸になる状態を睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)と言い、主に2つのケースが原因として考えられます。
ひとつは、上気道(空気の通り道)が物理的に塞がることで呼吸が一時的に停止してしまう閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)です。この場合は、舌が大きい、扁桃腺が大きい、あごが小さい、首の周囲に脂肪がたくさんついているといったことが原因と言われています。日本人の無呼吸の原因はほとんどこちらに該当します。
もうひとつは、脳からの呼吸指令が出ないがために呼吸中枢の異常で起こる中枢性睡眠時無呼吸症候群です。これは、肺や胸郭、呼吸筋、末梢神経には異常はみられませんが、脳からの指令が発せられないことで無呼吸が生じるというものです。なお、中枢性の患者さんは、SAS患者全体の数%です。
主な症状ですが、睡眠時では、いびきをはじめ、中途覚醒、不眠などがみられます。また、睡眠時の影響が起きている時間帯でも現れるようになり、疲労感、日中の強い眠気、起床時の頭痛などの症状も出るようになります。
不眠や中途覚醒などにより、眠りの質が悪い状態が続くと、高血圧や不整脈、糖尿病、高脂血症、心不全、脳卒中、うつ病などを引き起こす原因にもなりますので、症状に気づいたら、速やかにご受診ください。特に長距離ドライバーやタクシー運転手、電車の運転手などは職場で検査を義務付けられているところも多いようです。
ESS
日中の眠気の自己チェックには こちらのESS(Epworth Sleepless Scale)テストがよく使われます。
状況 | 0 | 1 | 2 | 3 | |
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1 | 座って読書をしているとき | ||||
2 | テレビを見ているとき | ||||
3 | 会議や劇場など人がたくさんいるところで何もしていないとき | ||||
4 | 1時間続けて車に乗せてもらっているとき | ||||
5 | 午後横になって休憩しているとき | ||||
6 | 座って人と話しているとき | ||||
7 | お酒を飲まずに昼食をとった後、静かに座っているとき | ||||
8 | 運転中、交通渋滞・信号などで数分間止まったとき |
- 0:決して眠くならない
- 1:まれに眠くなることがある
- 2:しばしば眠くなる
- 3:ほぼ眠ってしまう
8項目の合計が11点以上はSASの疑いが強くなります。一度当院でご相談ください。
検査について
当クリニックで行っている検査は簡易型のアプノモニターというもので行います。担当業者から届く装置をご自宅で一晩着けて、業者に返送後、次回外来までに解析を行います。この解析値がある一定の値より高く出て重症と診断されると、次のCPAP治療の適応となります。
検査装置とは、指先、鼻の下に気流、いびき音、血中酸素濃度を測るセンサーを取り付けて眠っていただくだけです。
治療について
重症のSASと診断された患者さんの治療に関しては、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)による治療を行います。併せて標準体重以上の方は、減量も重要な治療です。
【CPAP機器(例)】
CPAP療法は、専用の鼻マスクを睡眠時に装着する治療法です。これを装着することで鼻マスクの装置から、ある一定の圧力を気道にかけられる空気を送り込むことができます。これにより気道を押し広げることが可能になり、気道の閉塞を防ぐようになるのです。
なお、CPAP治療期間中は、定期的にご通院いただき、体調変化や治療状況などを医師に報告します。その際に装置の違和感などを覚えるようであれば、その都度ご相談ください。
ちなみに、簡易型検査で数値上は軽症~中等症と診断された場合でも、症状がひどい場合は、より精密な検査(PSG:ポリソムノグラフィー)を専門病院で受けることをお勧めします。その場合はご自宅ではなく、病院で一晩過ごしていただくことになります。
それでも、治療適応と診断されない場合は、横向きで眠ったり(抱き枕などで、仰向けで眠ることによる重力からくる閉塞を防ぎます)、マウスピースの作成(気道が閉塞しないように下顎を少し出すような形)を歯科医にお願いしたりします。ただこちらの効果には個人差があります。